住宅の断熱性能とは?等級4~7の違いや重要性を解説
住宅の断熱性能は、私たちが家の中でストレスフリーな状態で快適に生活していくために、なくてはならない性能です。私たちがその住宅に住んでいて快適だと感じるためには、暑い、寒い、といった室温や、家全体の空気の流れなどが関わってきます。
「断熱性能が高い家」と表現するとき、そのほかの一般的な住宅とどのようなところが違うのでしょうか。断熱性能に関しては、国による基準も関わってきますので、その辺りも詳しく解説していきます。
断熱性能とは

断熱性能は気密性能と並び、家の性能の中でも重要な性能のひとつです。「熱を断つ」と書いて、断熱です。簡単に説明すると、住宅の中の空気を外へ逃げにくくする構造のことを指します。冬場でいえば、家の中の暖かい空気をしっかり留めておくことができ、快適に過ごせる空間になるということです。
熱のエネルギーというのは、温度が高いところから低い所へ移動していく(熱は低温が高温の熱を奪いに行く)性質を持っています。そのため、お部屋を温めても隙間があったり、断熱性能がしっかりしていないと、せっかくの暖かい空気は外へ逃げていってしまいます。
断熱性能が高ければこの熱移動を防ぐことができます。断熱性能のよさで、お部屋の中の空気を閉じ込めることができ、常に一定の温度で快適に過ごせる空間になるというわけです。
UA値とは
断熱性能を表す指標としてUA値が使われています。
住宅にこもった熱は、窓や外壁などといった開口部から外に逃げていきます。室内にある熱が、壁などの外皮を通して、どれくらい外へ逃げやすいかを数値化したものがUA値です。
ここでいう外皮とは、天井、屋根、外壁、窓などを指します。お部屋と外の世界の境界となっている箇所です。専門用語では外皮平均熱貫流率と呼ばれ、この値が低ければ低いほど熱を室内に留める性能があり、断熱性が高いといえます。
この、熱の逃げやすさという点で行くと、鉄骨住宅と木造住宅を比べたときに、鉄の方が熱を通しやすいため、木造住宅の方が断熱性に優れているといえます。
そのため、UA値も、木造住宅の方がよい数値が出ます。ぴっちりと施行された木造住宅で断熱材も的確に施行されていれば、断熱性能の高い住宅ということになります。
Q値とは
Q値も、UA値と同じく、断熱性能を示す値として使われています。2013年に省エネ基準が改正されてからは、Q値ではなくUA値が使用されるようになりました。
UA値との違いは、Q値は、住宅の延床面積で計算する点、換気による熱の損失までも含んで計算する点です。
断熱性能の等級

気密性能がC値によって示されるように、断熱性能を示す値もあり「断熱等級」として表されます。
断熱等級は、詳しくは「断熱等性能等級」と呼ばれます。住宅の品質確保の促進等に関する法律に規定されているもので、断熱性能を示す指標として広く使われています。
また、断熱等級の指標と類似したものとして「省エネ等級」があります。この省エネ等級は、断熱等級に加え、エネルギー消費量なども加えて算出されるものですが、ここでは断熱等級についてご紹介します。
断熱等級はレベルが1から7までに分かれていますが、数字が大きくなればなるほど、断熱性能が高いといえます。
断熱等級は7段階に分かれています。断熱性能の高い家にしたいけれど、7段階もあると、どの等級を選んだらいいか迷う方も多いのではないでしょうか。この記事では、断熱等級4〜7までを具体的に紹介したいと思います。
断熱等級4
断熱等級4は、平成11年に定められた基準です。次世代省エネ基準に沿った断熱性能であることが求められるようになりました。そのため、ドアや窓などといった開口部に関しても基準が設けられています。2025年からはすべての住宅の最低基準として、これを守ることが義務付けられました。
断熱等級5

断熱等級5は、2022年4月に定められました。断熱等級4よりも厳しい基準が課され、環境に適合した住宅の基準であるZEH住宅の値への適合が求められるため、ZEH水準レベルと言われます。こちらの断熱等級5を持っていることで、住宅の省エネ率も上がるとされています。
(ZEH住宅とは、ネットゼロエネルギーハウスと呼ばれるもので、エネルギー収支をゼロ以下にすることのできる建物を指します。2022年の4月以降から規定されているものであり、環境への配慮を考えられた建物であることが求められるものです。)
さらに2030年以降では、こちらの断熱等級5はすべての新築住宅に対して求められるようになります。
断熱等級6
断熱等級6は2022年10月から定められた等級です。「一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」の基準で、HEAT20の中にも主にUA値のレベルを定めており、G2グレードを持つことが求められます。断熱等級6では、断熱等級4の時代に比べ、一次エネルギー消費量が、約3割削減可能となります。
断熱等級7
こちらの断熱等級7についても、先ほどの断熱等級6と同じく、2022年10月から定められた等級です。こちらは、HEAT20の中の、G2グレードを持つことが求められます。断熱等級7では、断熱等級4の時代に比べ、一次エネルギー消費量が、約4割削減可能となります。
こちらの記事では、住宅の気密性能について解説しています。C値の基準や気密が重要な理由も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
断熱性能の重要性

ここまで見てきたように、国の基準として断熱性能は細かく定められています。では、私たちが断熱性能にこだわって家を建てることで、具体的なメリットとして得られることはなんでしょうか。
季節に関係なく快適に暮らせる

夏は涼しい家だけど、冬場になると冷え込みが強すぎるので辛いなど、その住宅によってお悩みは様々なのではないでしょうか。
断熱性能を高めることで、夏は涼しく、冬は暖かい家が実現します。季節によって暑すぎる、寒すぎるといった不便を感じることが少ないため、1年を通して過ごしやすく、快適な家にすることができます。
ヒートショックのリスクを減らせる
お年寄りの介護をしている方で、おじいちゃんがお風呂に入ったと思ったら、なかなか出てこないので、行ってみると脱衣所で倒れていた!などの経験をした方はいないでしょうか。また、トイレの中で倒れていたりすると、鍵もかけてしまっているので、家族はなかなか気づきづらいという問題もあります。これらはお部屋の急な温度差で起こりやすい事故です。
断熱性能が高い家に住んでいれば、家全体の温度を一定に保つことができます。言い換えれば、この部屋はあったかいけれど、ほかの部屋に行くと一気に冷えてしまう、というお悩みがなくなります。
そのため、このように温かい浴槽から、冷え切った脱衣所に移動することで血圧が急降下してしまうような、お風呂場でのヒートショックの事故も防ぐことができます。
電気代を節約できる
室内の温度を一定に保ちやすいため、夏にエアコンの温度を低くしすぎる、冬に暖房の温度を高くしすぎるなど、無駄なエアコンの使用がなくなります。
ゆるい運転で十分にお部屋の中の温度を保つことができるため、エアコンを強く稼働させなくてよいのです。そのため、省エネになり、年間を通して、電気代を節約することが可能になります。
断熱性能を上げるには

ここまで、断熱性能を上げることのメリットについて見てきましたが、では具体的に、断熱性能の高いお家にするためには、どのような施工をしていけばよいのでしょうか。その方法についてご紹介します。
断熱材を入れる
断熱性能の高い家を作るポイントは、まずは断熱材を入れることです。外の空気をダイレクトに伝えてしまう壁や天井部分には、断熱材をしっかり入れて、空気を遮断することが重要です。
暮るみでは、断熱材を施工する際のルールとして、グラスウールという断熱材を扱うときは、カッターナイフの使用を禁止したり、断熱材は袋に入ったものを使わず、袋に入ってない状態で入れることとしています。
こういった細やかなルールを守ることで、隙間なく断熱材を入れることができ、断熱性能を保持できます。また、家の地震対策として、筋交いと言われる物は(木材が斜めに入っている箇所)断熱材の施工難易度が高いのですが、面材を使うなど工夫をして隅々まで丁寧に断熱材を入れるようにしています。
開口部の断熱性を高める

冬場の冷たい空気などは、玄関扉や窓などといった開口部からたくさん入ってきます。その周辺に正しい施工法で断熱材を入れたり、同時に気密性能も高めた家にしていくことが重要です。
冬場には、こういった開口部から、50パーセント近くの熱が外に逃げてしまうというデータもあります。夏場はさらに高い70パーセントの熱が入ります。こちらは、HEAT20の中の、G2グレードを持つことが求められます。
また、断熱材や気密性能のみならず、窓ガラスやフレームの質にもこだわってみましょう。たとえば、Low-Eガラスと呼ばれる窓では、熱を遮断してくれる効果が高いので、断熱性能を高めてくれるといえるでしょう。
フレームはアルミの物より樹脂や木製の物で熱の伝わりにくいもの選ぶとよいでしょう。
換気をする
断熱性能や気密性能を考えるときには、換気についても、セットで考える必要があります。
気密性能や断熱性能が高い家というのは、家中の隙間が少なく、外からの空気の出入りが少ないです。しかし家の中の空気が常にきれいな状態であるように、換気もセットで考えなければならないのです。給気と排気がうまくできるように、コントロールできる装置を設置することが大切です。
暮るみで使用しているのは、高価な熱交換換気システムではなく、地中熱利用換気システムで気密性は担保しつつ、あたたかい空気は室内に送れるようになっている、理にかなった換気システムです。
気密性を高める
断熱性能を表す指標として、断熱等級があることはご紹介しましたが、住宅の気密性能を示す指標にも値があり、それはC値という値で表されます。このC値が低ければ低いほど、その住宅は気密性能が高いといえます。
気密性能が高い家というのは、家中の隙間がとても少なく、外からの空気の出入りがしにくい家だといえます。お部屋の中の暖かい空気を逃しづらい構造です。
そのため、断熱性能と同時に気密性能も高めておくことが非常に重要だといえるでしょう。
暮るみの家では、平均C値0.14という数字を出しており、家一軒に対して全体の隙間が「切手3枚の大きさ以下」となっているため、ほぼ隙間のない住宅といえます。ハウスメーカーや工務店の中でも、とくに気密性能の高い住宅を建築しており、誇れる数値です。住宅の気密性能を確かめたいと思ったときには、こちらのC値を参考にされるとよいでしょう。
暮るみでは、高気密・高断熱の家づくりを行っています。資料請求や来場予約が公式ホームページから簡単にできます。あわせてご覧ください。
まとめ
暮るみでは、断熱材を隙間なく丁寧に詰める施工に力を入れています。しかし断熱材自体は、外壁内に埋め込んでしまうため、基本的にはお客様に見てもらう機会がありません。そのため、暮るみで住宅を建てていただいた方には、断熱材を入れた状態を、必ず見に来ていただくようにしています。
また、暮るみでは世界基準の家づくりをテーマにしているため、断熱性能のみならず、気密性能や空気の循環システムなどにも力を入れています。構造見学会に来ていただけると、建物の内部を目視で確認いただける状態になっています。ほかではできない貴重な体験だと思いますので、ぜひご自分の目で見て、性能の良さを実感して、判断していただけたらと思います。