BELSは一体なんのこと?省エネ評価制度のメリット・仕組み・補助金まで解説
BELS(ベルス)は、住宅の省エネルギー性能を客観的に示す認証制度です。新築や住宅購入を検討中の方なら、一度は耳にしたことがあるかもしれません。BELS認証を取得すると、多くのメリットを享受することができるのです。
この制度と混同されやすいZEH(ゼッチ)との違いを明確にしつつ、BELS取得で得られる具体的な利点について詳しく解説します。住宅選びを賢く行っていくために、ぜひこちらの記事で理解を深めてください。
BELS(ベルス)とは
BELS(建築物省エネルギー性能表示制度、ベルス)とは、建物の省エネ性能を評価・認定する制度で、正式名称は「建築物省エネルギー性能表示制度」です。一般社団法人住宅性能評価・表示協会が運用している基準となります。
その建物のエネルギー消費である、いわゆる「燃費のよさ」を星の数として、わかりやすく見える化することで、省エネ性能の比較をしやすくしているものです。
BELSは、非住宅建築物の省エネ性能を第三者が評価・表示する制度として、2013年に始まりました。同年1月に省エネ基準が改正され、建物全体の省エネ性能を比較できる「一次エネルギー消費量」が新たな指標になり、同年10月には、国土交通省が評価ガイドラインを制定したことによって、こちらの制度運用の基盤が整備されました。
後の章では、その詳しい内容を解説していきます。
出典:一般社団法人住宅性能評価・表示協会「建築物省エネルギー性能表示制度」(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001572116.pdf)
BELSの対象となる建物
では、BELSの評価の対象となる建物はどのような建物なのでしょうか。BELSの評価対象になる建物としては、新築の住宅であるか、既存の住宅であるかに関しては実は関係がありません。
BELSの評価は、新築・既存を問わず、住宅・非住宅のあらゆる建築物に対して実施できることとなっています。また、建築物全体についてはもちろん、その建物の一部に対しても評価が可能であることも特徴です。そのため用途や形態にかかわらず柔軟に対応できるのがメリットになります。
BELSとZEHの違い
ではBELSとZEHには、どのような違いがあるのでしょうか。ZEH(ゼッチ)とは、家庭で使うエネルギーと、創るエネルギーの収支がゼロになることを目指す住宅です。
現在、国も3省連携でZEH普及を推進していることからも、エネルギー性能の高い住宅は需要が高まっていると言えるでしょう。BELS自体は建物の省エネルギー性能の高さを評価する制度のため、必ずしもゼロエネルギーである必要はありません。
一方、ZEB(ゼブ)やZEH(ゼッチ)は「年間のエネルギー収支ゼロ」を目指すことを目的として作られたものです。そのために、BELSより厳しい基準が設けられていることも特徴となっています。
ZEBやZEHの認定を受けるには、最高評価である5つ星を取得していることが前提となってきます。このように、省エネルギー性能を実現する住宅の基礎評価として、BELSは重要な役割を果たしていることがわかっていただけるのではないでしょうか。
BELSを取得するメリット
では、BELSを取得するメリットはどのようなところにあるのでしょうか。具体的なところが知りたい方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。BELSを取得するメリットを詳しく見ていきましょう。
建物の省エネ性能を分かりやすい形で確認できる
BELS認定を取得することのメリットは、なんといっても、住宅の省エネルギー性能をわかりやすく、見やすい形で提示できるところにあります。
BELS認定は、専門知識がない方でも住宅の省エネルギー性能を簡単に理解できるよう「★(星)の数」で表示することになっています。パッと見た時点でも、誰にとってもわかりやすく、この直感的な表記によって、一目で住宅に関しての性能レベルが把握可能になっています。
さらに、BELS認定は国が定めた統一基準に基づいているところも信頼性を担保するうえで非常に重要な特徴となっていますし、BELSは異なる住宅間での比較検討も容易に行えます。これにより、消費者は自分のニーズに合った、本当に省エネな住宅を賢く選べるようになるのです。
第三者機関による評価のため信頼性が高い
第三者評価の結果を「★(星)の数」で表示することで、消費者が建物の省エネルギー性能を直感的に理解できます。第三者機関から客観的に評価された指標であるため、信頼性にもつながります。
消費者はエネルギー効率の高い建物を選びやすくなるということでもありますし、そういった省エネルギーな価値ある住宅の普及がさらに加速していくことも予想されます。このわかりやすい評価方法は、エコで持続可能な社会の実現にも貢献しているということになりますね。
不動産価値が上がる
BELS認定を取得すると、住宅の省エネルギー性能が第三者機関によって公式に評価されます。これは、自分の家の価値が客観的に見えるものになり、不動産の価値としても高まるということです。売却するときにも有利になってくれます。
エネルギー効率の高い住宅は、将来的なランニングコストを抑えるだけでなく、売却時にも活躍してくれるのは、非常に嬉しいことですよね。
補助金の申請で活躍してくれる
ZEHマークが表示された評価書は、住宅や建築物の性能を証明する重要な書類となってくれます。これを活用することで、補助金の申請時に、対象となる住宅や建築物の高い省エネルギー性能を明確に示すことができるのです。
複雑な手続きを円滑に進められるということでもあり、各種支援を受ける際の証明書類としても役立ってくれます。スムーズな認定や補助金の交付につながるため、活用できるポイントがあれば、忘れずに積極的に活用していきましょう。
BELSの表示内容
BELSには、ラベルと評価書があり、それぞれに細かな項目があります。意味を細かく知っていきましょう。
省エネ性能ラベル
BELS評価書には、住宅の省エネルギー性能に関する詳細な情報が記載されています。まず、評価対象が住宅(住棟)か住戸かが明記されます。エネルギー消費性能は、国の基準に対して、どの程度エネルギーを削減できているかを星マークで示し、断熱性能は、熱の出入りを家マークの数で表示することになっています。
目安光熱費は年間の概算を示しますが、マンション全体評価では非表示です。BELSによる第三者評価かどうかも明記され、物件名や再エネ設備の有無もわかります。
さらに、ZEH水準達成度や、ネット・ゼロ・エネルギー(ZEH)達成度もチェックマークで示され、評価日が記載されます。これにより、住宅の性能が総合的に把握できるのです。
出典:国土交通省|建築物の省エネ性能表示制度パンフレット(https://www.mlit.go.jp/shoene-label/files/shouhishamuke.pdf)
BELS評価書
BELS評価書は、省エネ性能ラベルとは別に発行されるものです。BELS評価書は、申請者から提出された一連の書類を評価機関が審査することで発行されます。
申請者は、BELS評価申請書や設計内容(現況)説明書、設計図書、一次エネルギー消費量および外皮計算書、そしてBELS評価物件掲載承諾書など、必要な書類一式を準備します。これらの書類は、評価機関が住宅の省エネルギー性能を正確に評価するために必須のものです。
提出された書類は評価機関による厳正な審査(BELS審査)を経て、最終的にBELS評価書が発行されます。この評価書は、住宅の省エネ性能を客観的に示す公的な証明となります。
エネルギー消費性能とは
住宅のエネルギー消費量がどの程度削減できているかは、BEIと呼ばれる指標で表されます。星マークの基準とともに、詳しくみていきましょう。
星マークの表示基準
住宅のエネルギー消費性能は、国が定める省エネ基準からの削減率を示すBEI指標で評価されます。再生可能エネルギー設備がない住宅は星0~4の5段階評価で、太陽光発電設備などがあるマンションなどは星0~6の7段階評価です。
星の数が多いほど、その建物の省エネルギー性能が高いことを意味します。この評価により、建物の環境負荷低減への貢献度が一目で分かります。
再生可能エネルギー利用設備がない住宅
再生可能エネルギー設備がない住宅の場合、30%以上のエネルギー削減率を上限として、星0から星4までの5段階で評価されます。星が多いほど、その住宅の省エネルギー性能が高いことを意味し、環境負荷の低減に貢献していると判断できます。
BEI(Building Energy-efficiency Index)は、国が定める省エネ基準から、住宅のエネルギー消費量がどの程度削減できているかを示す指標ですが、このように、この指標は住宅の設備面を示す基準としても役立ちます。
再生可能エネルギー利用設備がある住宅
一方で再生可能エネルギー利用設備がある住宅は、50%以上のエネルギー削減率を上限として、星0から星6までの7段階で評価されます。
省エネ基準は0%以上の削減率(星1つ)で達成し、さらに高い誘導基準は20%以上の削減率(星3つ)で達成とみなされます。これは、より高い省エネルギー性能を持つ建物が明確に評価されることを意味していて、環境負荷低減への貢献度を分かりやすく示されることになります。
BELSは星5評価を目指すべき?
BELS5つ星を取得することは、その対象建築物に価値があることをわかってもらえる指標となります。
星5つという最高評価を公式にアピールすることで、物件価値が向上するわけです。とくに、ESG投資家や不動産購入者に対し、星の数という視覚的な表現で高い省エネルギー性能を効果的に示せるのが魅力です。
また、第三者機関による評価であるBELSは、高い信頼性があるため、入居者からの信頼も獲得しやすく、入居者募集をされる方の観点から見ても大きなメリットとなります。
さらに、BELS5つ星とZEB・ZEHの取得を組み合わせることで、補助金制度の活用も可能です。関連設備費用の一部を負担してくれるお得な制度も充実しているため、積極的に活用を検討してみてはいかがでしょうか。
断熱性能とは
BELSは建物の省エネ性能を第三者機関が評価・認証する制度ですが、その中でも断熱性能はその中核をなす重要な評価項目となっています。断熱性能は「建物からの熱の逃げやすさ」と「冷房期の建物への熱の入りやすさ」という2つの観点から評価されます。
そのうち性能が低い方を基準としてレベル1〜7の7段階で評価されます。こちらのレベルが高いほど、断熱性が優れている住宅であることを示します。BELS上では家マークと数字で視覚的に表示されます。
またこの断熱レベルは、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)における「断熱等性能等級」と対応しており、たとえばBELSのレベル5は品確法の等級5に相当します。さらに、非住宅建築物についてはPAL*という指標を用い、これを基に設計と基準の差を表すBPI(Building Palstar Index)によって評価されます。
BELSによって断熱性能を客観的に可視化することは、エネルギー消費量の削減や快適な室内環境の実現だけでなく、将来的な脱炭素社会の構築にも寄与することになるんですね。
こちらの記事では、長期優良住宅について解説しています。認定条件やメリット・デメリットも取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
目安光熱費とは
目安光熱費は、住宅の省エネルギー性能に基づき、特定の条件下で算出された年間の光熱費の概算額となっています。目安光熱費の計算方法としましては、全国一律の燃料単価などをもとに計算されています。そのため、実際にかかってくるご家庭の使用の光熱費とは異なるものとなっています。
実際の光熱費というのは、個々の住宅における設備の使用状況によって変わってきてしまうものです。たとえば、ご契約している電力会社やガス会社によっても、その料金プランは異なるため、算出される数字も違ってきます。さらには居住者のライフスタイルなど、多岐にわたる要因によって変動していくものです。
目安光熱費は、異なる住宅間の省エネ性能を比較検討する際の参考情報として活用いただくことを目的としています。
計算方法
住宅の目安光熱費は、国が定める計算方法に基づいて算出されます。これは、住宅の省エネルギー性能に応じた「設計二次エネルギー消費量」に、全国統一の燃料単価を乗じて割り出される年間光熱費の概算です。
設計二次エネルギー消費量とは、建物の外皮や設備の設計仕様から算出した、電気・ガス・灯油などの消費量のことを指しています。経済産業省資源エネルギー庁の小売事業者表示制度で定められた単価に整合しており、市場価格の変動で改定される可能性もあります。
注意事項
目安光熱費の計算方法は、あくまで目安であり、実際の光熱費とは異なる場合がある点に注意が必要です。この金額が実際の請求額と完全に一致するわけではないことをご理解のうえ、賢い住宅選びにご利用ください。
BELSの申請
BELSを取得するためには、申請が必要になります。また、こちらの申請は、いつでも可能なものとなっています。BELS申請に必要な書類や流れ、費用について詳しくみていきましょう。
出典元|一般社団法人住宅性能評価・表示協会「BELS 申請~評価書等交付の基本的な流れ 」(https://www.hyoukakyoukai.or.jp/bels/pdf/170401bels_05.pdf)
必要書類
BELSの具体的な申請方法としては、まず最初に、いくつかの書類を申請機関に提出します。申請書類としては申請書、設計内容説明書、BELSに係る評価物件掲載承諾書となります。
また、設計図書として、付近見取り図、配置図、仕様書、仕上げ表、床面積求積表、用途別床面積求積表、平面図、断面図、立面図、各部詳細図、各種設備機器表が必要となります。そのほか、計算書なども必要です。数は多いですが、割と苦労せずに揃えられることが多いようです。
申請の流れ
申請書類を提出した後は、審査機関からの連絡を待ちましょう。書類が受理された場合には、必要書類の確認後に審査が始まります。審査費用は機関や住宅の種類・規模により異なります。
一戸建てで単独審査の場合は3〜5万円程度が相場です。代行を依頼する場合は別途費用が発生します。審査完了後、問題がなければBELS評価書が交付され、必要に応じてプレートやラベルの発行も可能です。申請から交付までは通常2〜4週間が目安となっています。
費用
BELSの取得にかかる費用には、民間検査機関に支払う「審査費用」と、省エネ計算代行会社に支払う「省エネ計算代行費用」があります。これらは建物の規模や内容、依頼先の会社によって大きく異なっていて、明確な相場は定められていません。
そのため、事前に複数の会社に見積もりを取って、費用感を把握しておくことが重要です。ケースによっては数万円から十万円以上かかることもあります。
申請の代行も可能
自分で申請することが大変だと感じる方は、申請の代行を利用することも可能です。BELS申請代行の費用相場は、外皮計算や一次エネルギー消費量計算を含む場合で約107,800~115,000円、申請代行のみの場合は88,000~180,000円程度です。
暮るみでは、施工事例を紹介しています。BELS(省エネ性能表示)とバリアフリーで50年後も快適に住める住宅を掲載しています。気になった方は、ぜひご覧ください。
BELSを活用できる補助金制度
BELSを活用することで、受けられる補助金があります。ZEH支援事業、子育てグリーン住宅支援事業などです。詳しく見ていきましょう。
ZEH支援事業
ZEH支援事業は、正式には「戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業」と呼ばれ、住宅の新築等を対象とした補助金制度となっています。
基本となるZEH(高い断熱性と高効率設備で一次エネルギー収支ゼロを目指す住宅)の要件を満たすことで、1戸あたり55万円が支給されます。これには「ZEHビルダーまたはプランナー」の関与と「戸建てZEH」であることが条件です。(実際の申請はビルダーが行います。)
さらに、省エネ基準から25%以上の一次エネルギー消費量削減に加え「外皮性能の強化」「高度エネルギーマネジメント」「電気自動車充電・充放電設備」から2つ以上を導入すると、補助額は100万円に増額されます。補助額はZEHの種類や満たす要件によって異なり、賢く活用することでとてもお得になります。
子育てグリーン住宅支援事業
子育てグリーン住宅支援事業は、2050年カーボンニュートラル実現へ向け、ZEH水準を大きく上回る省エネ住宅の導入を支援するという意味合いで作られたものです。
エネルギー価格高騰の影響を受けやすい子育て世帯や若者夫婦世帯が対象で、新築住宅のZEH基準義務化を見据え、幅広い支援を行います。既存住宅の省エネ改修も支援対象です。(旧子育てエコホーム支援事業です。)
とくに、0歳から18歳未満の子どもがいる、または夫婦どちらかが39歳以下の世帯が、解体を含むZEH水準住宅への建て替えを行う場合、国土交通省と環境省連携の「子育てグリーン住宅支援事業」から60万円の補助金が申請できます。ただし、環境省のZEH補助金55万円とは併用できません。
床暖房や補助設備の導入がなく、既存住宅の解体を行う場合、この60万円の補助金の方がお得なことがあります。申請は建築会社を通じて行い、期間は遅くとも2025年12月12日までとなっています。
【注意】住宅ローン減税にBELS評価書は使えない
BELSは、住宅ローン控除の申請においても、重要な役割を果たします。控除申請には、住宅が省エネ基準以上に適合している証明書が必要ですが、BELS評価書はその取得に不可欠な書類となるためです。
具体的には「ZEH水準省エネ住宅」や「省エネ基準適合住宅」であることを証明するには「住宅省エネルギー性能証明書」が求められます。この証明書の発行には、第三者機関による評価結果が必須であり、BELS認証を受けている住宅は認定を受けやすくなります。
BELS認証単独で住宅ローン控除を申請できるわけではありませんが、控除申請の条件のひとつであり、取得することで手続きがスムーズに進むようになります。
具体的にはBELS評価書をもとに、建築士や評価機関関係者が施工状況をチェックし、住宅省エネルギー性能証明書を発行するという間接的な使い方になります。
まとめ
BELSについて、ご理解いただけたでしょうか。取得しておくことによってメリットになる部分はたくさんあります。これまでご紹介してきたように住宅の価値をわかりやすく示してくれるため、さまざまなことに活用できてお得です。
暮るみでも、住宅の性能に関しては昔から力を入れて施工してきました。それは耐震等級やC値といった点にも表れており、長期優良住宅の審査にも通ってきています。特別なことをしているわけではなく、お客様のために当たり前のことをしてきた結果でした。
暮るみの家では高気密、高断熱はもちろんのこと、健康で快適に暮らせる工夫をしています。見学会で体感してもらうのもおすすめです。ぜひ住宅に関することはご相談ください。